日本語でしかわからない?和歌の魅力 古今和歌集 巻一:春上 61~68首

日本語でしかわからない?和歌の魅力 古今和歌集 巻一:春上 61~68首

古今和歌集 巻一:春上 61~68種の魅力

古今和歌集 巻一:春上 61~69種の魅力

和歌は日本の文学の中でも特に独自性が際立つ文化遺産です。その短い形式に、季節の移ろいや人々の感情、自然への畏敬を織り込むことで、言葉以上の深い情感を伝えてきました。特に『古今和歌集』は和歌の伝統を象徴する作品であり、その中に込められた美しさは翻訳だけでは十分に伝わらないものがあります。ここでは、『古今和歌集』春上の第61首から68首を取り上げ、各和歌の作者、読み方、ローマ字読み、意味、背景、そして翻訳では伝わらない良さについて詳しく解説します。

 第61首 作者:伊勢(いせ)

和歌:
 さくら花   春くははれる   年たにも   人の心に    あかれやはせぬ

ローマ字読み:
Sakura hana Haru kuwaharu ru Toshi tani mo Hito no kokoro ni Akare yawa senu

第61首 作者:伊勢(いせ)

意味: 桜花よ、一月長い春の間も人々に飽きられぬならば、満足させるまで咲き続けてほしい。

背景: 桜の花と人の心の密接な関係を描き、日本人にとって桜がどれほど重要な存在であるかを示しています。

翻訳では伝わらない良さ: 「心にあかれやはせぬ」という表現に、日本語特有の音感と余韻が宿り、桜の儚さと美しさが響きます。

 第62首 作者:読人不知(よみびとしらず)

和歌:
あたなりと なにこそたてれ   桜花    年にまれなる   人もまちけり

ローマ字読み:
Atanari to Nani koso tatere Sakura hana Toshi ni mare naru Hito mo machikeri

第62首 作者:読人不知(よみびとしらず)

意味: 桜の花はすぐに散ってしまうことで有名なのに、そんな花でも1年に稀にしか来ない人を待っていたのか。

背景: 桜の花の希少性を、人との再会の喜びと重ね合わせた歌。何年も訪ねてこなかった家の主が、久しぶりに訪ねてきたときに詠んだものです。

翻訳では伝わらない良さ: 「なにこそたてれ」という表現の含意が、英語に訳すと失われやすく、桜と人を同等に扱う感覚が伝わりにくい。

 第63首 作者:在原業平(ありわらのなりひら)

和歌:
 けふこすは  あすは雪とそ   ふりなまし きえすはありとも  花と見ましや

ローマ字読み:
Kefu kosu wa Asu wa yuki to so Furi namashi Kiesu wa ari tomo Hana to mimashiya

第63首 作者:在原業平(ありわらのなりひら)

意味: もし今日訪れなければ、明日は雪となって降り積もるであろう。もし消えなかったとしても、それを花としてみることができようか。

背景: 「あだなりとなにこそたてれ桜花年にまれなる人もまちけり」に対する返答で、業平を待っていた女性が自身を花に例えたので、それに対する皮肉の応酬でもあります。

翻訳では伝わらない良さ: 「ふりなまし」の韻や、自然と心情の繊細な交わりが言語的に味わえます。

 第64首 作者:読人不知(よみびとしらず)

和歌:
ちりぬれは  こふれとしるし  なきものを  けふこそさくら をらはをりてめ

ローマ字読み:
Chirinureba Kofure to shirushi Naki mono o Kefu koso sakura Orawa oriteme

第64首 作者:読人不知(よみびとしらず)

意味:散ってしまった以上は、どんなに恋煩っても意味はない。今日こそ桜を折るならば折ってしまえばいい。

背景: 桜の花を折ってしまうのは惜しいが、どうせ散るなら今のうちに追ってしまおうか考える心情を詠み込んだ歌。

翻訳では伝わらない良さ: 「けふこそ」という今日だけの特別感が、日本語特有の微妙なニュアンスを表現しています。

 第65首 作者:読人不知(よみびとしらず)

和歌:
をりとらは をしけにもあるか  桜花   いさやとかりて  ちるまては見む

ローマ字読み:
Oritoraba Oshikeni mo aruka Sakura hana Isaya to karite Chiru made wa mimu

第65首 作者:読人不知(よみびとしらず)

意味: 桜の花を折ってしまいたいが、流石にそれは惜しい気がする。ならばここに宿を借りて、散ってしまうまで眺めていよう。

背景: 桜の美しさと散りゆく無常感を捉えた歌で、自然の摂理への人間の抗えない心情が感じられます。

翻訳では伝わらない良さ: 「いさやとかりて」という表現の語感が、心の葛藤を繊細に表現しています。

 第66首 作者:紀有朋(きのありとも)

和歌:
さくらいろに   衣はふかく   そめてきむ   花のちりなむ   のちのかたみに

ローマ字読み:
Sakura iro ni Koromo wa fukaku Somete kimu Hana no chirinamu Nochi no katami ni

第66首 作者:紀有朋(きのありとも)

意味: 桜色に深く染めた衣を身にまとい、花が散った後でもその美しさを忘れぬようにしよう。これが散った後の記念となるのだ。

背景: 桜の花を衣に染めるという文化的な行為を通じて、桜への深い愛着を詠んだ歌。

翻訳では伝わらない良さ: 「のちのかたみに」という言葉に込められた未来への思いと、現在の美の儚さの対比が日本語特有の表現として輝きます。

 第67首 作者:躬恒(みつね)

和歌: 
 わかやとの  花見かてらに   くる人は   ちりなむのちそこ  ひしかるべき

ローマ字読み:
Waka yato no Hanami katera ni Kuru hito wa Chirinamu nochi soko Koishikaru beki

第67首 作者:躬恒(みつね)

意味: 我が家の庭に桜を見に来る人々は、桜が散った後は誰も来なくなる。さぞ恋しいものと思うだろう。

背景: 花見見物に来た客人らに対して詠んで送ったもので、桜が散った後は誰も来なくなるだろうから、後々恋しくなるだろうと皮肉めいた内容です。

翻訳では伝わらない良さ:
「ちりなむのちそこひしかるべき」という言葉の響きが、日本語特有の情緒と花の儚さを深く刻みます。この微妙な余韻は翻訳では表現しにくい独特の美しさです。

 第68首 作者:伊勢(いせ)

和歌:
 見る人も   なき山さとの   さくら花   ほかのちりなむ   のちそさかまし

ローマ字読み:
Miru hito mo Naki yama sato no Sakura hana Hoka no chirinamu Nochi so saka mashi

第68首 作者:伊勢(いせ)

意味:
誰も見る人がいない山里の桜の花よ。他の花が散ってしまった後にこそ、その花を咲かせてほしいものだ。

背景:
目立たない場所に咲く桜を讃えた歌。遅咲きの桜に対して、少しでも長い間桜を鑑賞したいという思いを感じます。

翻訳では伝わらない良さ:
「さかまし」という言葉には、日本語特有の婉曲的な願望や余韻が含まれており、その詩的な効果は他言語では表現しにくいものです。

まとめ

まとめ

『古今和歌集』の春の和歌は、桜を中心に自然と心情を密接に結びつけています。その中に込められた日本語特有の美しさや文化的背景は、翻訳ではどうしても再現が難しいものです。和歌を通じて、言葉の奥深さと儚さを感じてみてはいかがでしょうか。

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