日本語でしかわからない?和歌の音韻とリズムの美しさ第7弾

日本語でしかわからない?和歌の音韻とリズムの美しさ第7弾

日本語でしかわからない、翻訳では伝わらない和歌の魅力:百人一首 第三十一首から第三十五首

日本語でしかわからない、翻訳では伝わらない和歌の魅力:百人一首 第三十一首から第三十五首
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百人一首の和歌は、日本語特有の音韻や表現技法、背景にある文化を通して、深い情緒や情景を伝えています。ここでは第三十一首から第三十五首の和歌について、ローマ字読み、意味、背景、そして翻訳では伝わらない良さを解説します。それぞれの作者の名前とその読みも記載しています。

 第三十一首:坂上是則(さかのうえのこれのり)

和歌:
 朝ぼらけ  有明の月と   見るまでに   吉野の里に   降れる白雪
ローマ字読み:
Asaborake  Ariake no tsuki to Miru made ni Yoshino no sato ni Fureru shirayuki

第三十一首:坂上是則(さかのうえのこれのり)
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  • 意味: 夜が明けかけた頃、有明の月と思うほどの明るさで、吉野の里に白雪が降り積もっている。
  • 背景: 坂上是則は平安時代の歌人で、自然の情景を巧みに詠むことで知られています。この歌では夜明け前の幻想的な景色を詠んでいます。
  • 翻訳では伝わらない良さ: 「朝ぼらけ」や「有明の月」という表現が描き出す時間の移ろいと、雪の白さが持つ日本的な美意識が、翻訳では完全に伝わりません。

 第三十二首:春道列樹(はるみちのつらき)

和歌:
 山川に    風のかけたる  しがらみは  流れもあへぬ  紅葉なりけり
ローマ字読み:
Yamakawa ni  Kaze no kaketaru Shigarami wa Nagare mo aenu Momiji narikeri

第三十二首:春道列樹(はるみちのつらき)
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  • 意味: 山間を流れる川に、風が作ったようなしがらみがあり、そのせいで流れきれない紅葉が溜まっているのだ。
  • 背景: 春道列樹は平安時代の歌人で、この歌は自然の巧妙な力を感じさせる描写を詠んだものです。紅葉の美しさと川の流れの対比が印象的です。
  • 翻訳では伝わらない良さ: 「しがらみ」という言葉の持つ多義性や、紅葉が川に流れきれないという日本的な風景の繊細さは、日本語でしか感じ取れません。

 第三十三首:紀友則(きのとものり)

和歌:
 久方の   光のどけき   春の日に    しづ心なく   花の散るらむ
ローマ字読み:
Hisakata no Hikari nodokeki Haru no hi ni Shizu kokoro naku Hana no chiruramu

第三十三首:紀友則(きのとものり)
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  • 意味: 久方ぶりに穏やかな光が差し込む春の日、それなのにどうして花は静けさを保たずに散っていくのだろうか。
  • 背景: 紀友則は平安時代の歌人で、この歌は春の穏やかさと散る花の儚さを対比的に詠んでいます。桜の散る情景が象徴的です。
  • 翻訳では伝わらない良さ: 「久方の光」という枕詞が持つ美しい響きや、花が散る儚さに込められた哲学的な深みは、翻訳では捉えきれません。

 第三十四首:藤原興風(ふじわらのおきかぜ)

和歌:
 誰をかも   知る人にせむ    高砂の     松も昔の     友ならなくに
ローマ字読み:
Dare o kamo Shiru hito ni semu Takasago no Matsu mo mukashi no Tomo naranaku ni

第三十四首:藤原興風(ふじわらのおきかぜ)
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  • 意味: 誰を親しい人とすればよいのか。かつての友人もいなくなり、高砂の松さえ昔の友ではないというのに。
  • 背景: 藤原興風は平安時代の歌人で、この歌は孤独を詠んだものです。「高砂の松」という象徴が、時の流れを示唆しています。
  • 翻訳では伝わらない良さ: 「松」という日本の文化的象徴や、「友ならなくに」という語尾の余韻が生む深い感傷は、翻訳では再現が難しいです。

 第三十五首:紀貫之(きのつらゆき)

和歌:
 人はいさ   心も知らず   ふるさとは   花ぞ昔の    香に匂ひける
ローマ字読み:
Hito wa isa Kokoro mo shirazu Furusato wa Hana zo mukashi no Ka ni nioikeru

第三十五首:紀貫之(きのつらゆき)
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  • 意味: 人の心はよくわからないけれど、古里の花だけは昔と同じ香りで咲いている。
  • 背景: 紀貫之は『土佐日記』の作者として有名で、この歌は故郷への懐かしさと変わらない自然の美しさを詠んだものです。
  • 翻訳では伝わらない良さ: 「花ぞ昔の香に匂ひける」という表現に込められた、花の香りを通じた時間の感覚は、日本語ならではの感性です。

日本語だからこそ味わえる和歌の深み

日本語だからこそ味わえる和歌の深み
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和歌は言葉の響きや文化的背景が深く結びつき、日本語だからこそ味わえる感動をもたらします。掛詞や枕詞の響き、余韻や情緒の表現は翻訳では再現が難しく、その一瞬に込められた感情や情景が日本語の中に息づいています。これらの和歌を通じて、日本語の美しさをより深く感じていただければ幸いです。

最後に

最後に
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今更ではありますが、あまり難しく考えずに感覚的に捉えるだけでも十分です。日本人ですら読めない部分があったり、理解の難しいところも多くあります。ただ、音の響きリズム感などは、国に関わらず楽しめるものだと思います。きっかけは何でも構わないと思います。この記事を読んだときだけで、そのまま忘れてしまっても問題はありません。ただ、たまたまではあったとしても、一度でも目にしたこと、読んだことが少しでも良いきっかけになればと思います。

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