日本語でしかわからない?和歌の魅力 古今和歌集 巻一:春上 31~40首

日本語でしかわからない?和歌の魅力 古今和歌集 巻一:春上 31~40首

古今和歌集 春上 31-40 首の魅力

古今和歌集 春上 31-40 首の魅力

この記事では、古今和歌集 春上 31~40首の和歌の魅力を、個々の和歌の内容とその背景、そして翻訳では伝わらない日本独特の感性を中心に解説しています。

 第31首 作者名:伊勢(いせ)

和歌
 はるがすみ たつを見すてて ゆくかりは 花なきさとに すみやならへる

ローマ字読み
Harugasumi tatsu wo misutete yuku kari wa hana naki sato ni sumi ya naraeru

第31首 作者名:伊勢(いせ)

意味: 春霞が立ち込めるのを後にして渡り鳥が行く先は、花がない地に住み慣れてるのだろうか。

背景: 春の情景と渡り鳥の姿を重ね合わせ、自然と鳥の関係性を詠んでいます。

翻訳では伝わらない美しさ: 「花なきさとにすみやならへる」という表現が、渡り鳥の宿命と寂しさを繊細に描き出しています。

 第32首 作者名:読み人知らず

和歌
 折りつれば 袖こそにほへ 梅花 有りとやここに うぐひすのなく

ローマ字読み
Oritsure ba sode koso nihoe ume no hana ari to ya koko ni uguisu no naku

第32首 作者名:読み人知らず

意味: 梅の花を折り取ると袖に香りが染みつく。そのせいかここで鶯が鳴いている。

背景: 春の象徴である梅と鶯の取り合わせを通じて、自然の調和を詠んでいます。

翻訳では伝わらない美しさ: 「袖こそにほへ」という感覚的な表現が、日本独特の自然への親しみを伝えます。

 第33首 作者名:読み人知らず

和歌
 色よりも かこそあはれと おもほゆれ たが袖ふれし やどの梅ぞも

ローマ字読み
Iro yori mo ka koso aware to omohoyure taga sode fureshi yado no ume zomo

第33首 作者名:読み人知らず

意味: 色よりも香りがしみじみと愛おしい。いったい誰が袖をふれて、移り香を残し伝えたのであろうか。

背景: 梅の香りと、それにまつわる記憶や情感が詠み込まれています。

翻訳では伝わらない美しさ: 「香こそあはれ」という感覚が、日本人の香りに対する繊細な感受性を表現しています。

 第34首 作者名:読み人知らず

和歌
 やどちかく 梅の花うゑじ あぢきなく まつ人のかに あやまたれけり

ローマ字読み
Yadochikaku ume no hana ueji adiki naku matsu hito no ka ni ayamatarekeri

第34首 作者名:読み人知らず

意味: 宿の近くに植えられた梅の花が、むなしく待つ人の香りをも誤らせたのだろうか。

背景: 梅の花と人の想いが交錯し、待つことの切なさが詠まれています。

翻訳では伝わらない美しさ: 「香にあやまたれけり」という表現が、香りが心情や記憶を揺さぶる様子を見事に描いています。

 第35首 作者名:読み人知らず

和歌
 梅の花 たちよるばかり ありしより 人のとがむる かにぞしみぬる

ローマ字読み
Ume no hana tachi yoru bakari arishi yori hito no tokamuru ka ni soshiminuru

第35首 作者名:読み人知らず

意味: 梅の花がそばにあるだけで、人がその香りに心を引き寄せられるようだ。

背景: 梅の香りが人を惹きつける力を持つことを、優雅に詠み上げています。

翻訳では伝わらない美しさ: 「とかむるかに」という繊細な香りへの感受性が、日本文化の独特な美意識を示しています。

 第36首 作者名:東三条の左大弁

和歌:
 鶯の 笠にぬふといふ 梅の花 折りてかざさむ おいかくるやと

ローマ字読み
Uguisu no kasa ni nuu to iu ume no hana orite kazasamu oikakuru yato

第36首 作者名:東三条の左大弁

意味: 鶯がその笠に縫い付けるという梅の花を折り取って飾りましょう、我が身の老いも隠せると思い。

背景: 梅と鶯の象徴的な取り合わせを独創的に表現しています。

翻訳では伝わらない美しさ: 「笠にぬふ」という擬人化の表現が、日本独自の自然観を表しています。

 第37首 作者名:素性(そせい)

和歌
 よそにのみ あはれとぞ見し 梅の花 あかぬいろかは 折りてなりけり

ローマ字読み
Yoso ni nomi aware to zo mishi ume no hana akanu iro ka wa orite narikeri

第37首 作者名:素性(そせい)

意味: 遠くから見ているだけで心惹かれる梅の花だが、その色の美しさに耐えきれず、ついに折り取ってしまった。

背景: 遠くから見る美しさと、手に取ることで得られる喜びを対比しています。

翻訳では伝わらない美しさ: 「あかぬいろ」という表現が、飽きることのない美しさを描き出しています。

 第38首 作者名:友則(とものり)

和歌
 君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をもかをも しる人ぞしる

ローマ字読み
Kimi narade tare ni ka misemu ume no hana iro wo mo ka wo mo shiru hito zo shiru

第38首 作者名:友則(とものり)

意味: あなた以外の誰に見せようか。この梅の花の色も香りも分かるのは、あなたしかいない。

背景: 特定の相手に対する想いが込められた一首で、贈り物としての梅が詠まれています。

翻訳では伝わらない美しさ: 「色をも香をも」という表現が、五感で味わう美しさを強調しています。

 第39首 作者名:貫之(つらゆき)

和歌
 梅の花 にほふ春べは くらふ山 やみにこゆれど しるくぞ有りける

ローマ字読み
Ume no hana nihou harube wa kurafu yama yami ni koyure do shiruku zo arikeru

第39首 作者名:貫之(つらゆき)

意味
梅の花が香り立つ春の時期には、暗い山中でも道を越えることができるのだと、はっきりわかる。

背景
春の象徴である梅の花の香りが、視界が利かない暗闇の中でも案内役となる情景を描いています。

翻訳では伝わらない美しさ
「にほふ」という表現が、香りが漂う様子を通じて、目に見えない春の気配を巧みに描いています。

 第40首 作者名:躬恒(みつね)

和歌
 月夜には それとも見えず 梅の花 かをたづねてぞ しるべかりける

ローマ字読み
Tsukiyo ni wa sore tomo miezu ume no hana ka wo tazunete zo shirube karikeru

第40首 作者名:躬恒(みつね)

意味
月夜の中では、目でははっきり見えない梅の花。その香りをたどってこそ、存在を確かめられるのだ。

背景
視覚よりも嗅覚で季節や花を感じる日本独特の美意識を表現しています。

翻訳では伝わらない美しさ
「かをたつねて」という表現が、香りが案内役となる様子を描き、視覚を超えた美的体験を語っています。

まとめ

まとめ

31〜40首の和歌には、春を象徴する梅や鶯、霞などが多く詠み込まれています。それらは視覚的な美しさだけでなく、香りや音といった感覚を伴う情景を豊かに描き出しています。特に翻訳では、こうした感覚的な描写や日本特有の自然観が伝わりにくい点が挙げられます。和歌の言葉の余白に込められた想いを感じ取ることで、より深い美しさを味わえるのが和歌の真髄といえるでしょう。

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