日本語でしかわからない?和歌の音韻とリズムの美しさ第19弾

日本語でしかわからない?和歌の音韻とリズムの美しさ第19弾

百人一首91から95首の魅力について

百人一首91から95首の魅力について

日本の伝統的な文学形式である和歌は、その簡潔な表現の中に豊かな感情や情景を描き出すことで知られています。ここでは、百人一首の91番から95番までの和歌について、作者名、よみがな、和歌、ローマ字読み、意味、背景、そして翻訳では伝わりにくい良さを解説します。

 第91首 後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくのせっしょうさきのだいじょうだいじん)

和歌:
きりぎりす  鳴くや霜夜の  さむしろに  ころもかた敷き  ひとりかも寝む

ローマ字読み:
Kirigirisu naku ya shimoyo no samushiro ni Koromo kata shiki hitori kamo nemu

第91首 後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくのせっしょうさきのだいじょうだいじん)

意味:
こおろぎが鳴く霜の降りる寒い夜、むしろの上に衣を片方だけ敷いて、ひとり寂しく寝るのでしょうか。

背景:
この和歌は、秋の夜の寂しさをこおろぎの鳴き声と霜の情景に託して詠まれています。孤独な心情が静かな秋の夜とともに浮かび上がります。

翻訳では伝わらない良さ:
「きりぎりす」という秋の虫の鳴き声が、日本の季節感を生々しく伝えます。この音の響きや情景描写の細やかさは、翻訳では感じ取りにくい独特の魅力です。

 第92首 二条院讃岐(にじょういんのさぬき)

和歌:
 わが袖は   潮ひに見えぬ  沖の石の   人こそ知らね   乾く間もなし

ローマ字読み:
Waga sode wa shiohi ni mienu oki no ishi no Hito koso shirane kawaku ma mo nashi

第92首 二条院讃岐(にじょういんのさぬき)

意味:
私の袖は、潮が引いても現れない沖の石のように、他の人には見えないけれど、涙が乾く間もないのです。

背景:
恋ゆえの悲しみの涙を、人に見せない切ない思いを詠んでいます。

翻訳では伝わらない良さ:
潮干と沖の石という自然のイメージが、恋の苦しさを巧みに象徴しています。このような比喩的表現は、日本語特有の情感豊かな美しさを持ち、翻訳ではその繊細さが損なわれることが多いです。

 第93首 鎌倉右大臣(かまくらのうだいじん)

和歌:
 よのなかは   常にもがもな   渚こぐ    あまの小舟の   綱手かなしも

ローマ字読み:
Yo no naka wa tsune ni mogamo na nagisa kogu Ama no obune no tsuna de kanashi mo

第93首 鎌倉右大臣(かまくらのうだいじん)

意味:
この世の中がいつまでも変わらず続いてほしい。渚を漕ぐ漁師の小舟の綱を引く手が愛おしいから。

背景:
平穏な日常と、その中に感じるささやかな幸せを詠んだ一首です。漁師の生活感を愛おしむ視点が特徴的です。

翻訳では伝わらない良さ:
「常にもがもな」という言葉には、変わらないものへの憧れが凝縮されています。この感覚は日本語の微妙なニュアンスに根ざしており、他言語への翻訳では捉えきれない繊細さがあります。

 第94首 参議雅経(さんぎまさつね)

和歌:
 み吉野の   山の秋風   さ夜ふけて  ふるさと寒く   衣うつなり

ローマ字読み:
Miyoshino no yama no akikaze sa yo fukete Furusato samuku koromo utsu nari

第94首 参議雅経(さんぎまさつね)

意味:
吉野の山から吹く秋風が夜更けに冷たく、故郷の寒さを感じながら衣を打つ音が響いています。

背景:
秋の冷え込む夜、懐かしい故郷の情景が目に浮かぶ一首です。吉野の自然美と孤独感が見事に調和しています。

翻訳では伝わらない良さ:
「さ夜ふけて」という表現は、夜の静けさや寒さを一層引き立てています。このような情景描写は、日本語の音やリズムによって生き生きと感じられるものです。

 第95首 前大僧正慈円(さきのだいそうじょうじえん)

和歌:
おほけなく うき世の民に おほふかな  わが立つそまに   墨染の袖

ローマ字読み:
Ookenaku ukiyo no tami ni oou kana Waga tatsu soma ni sumizome no sode

第95首 前大僧正慈円(さきのだいそうじょうじえん)

意味:
恐れ多いことですが、この浮き世の人々のために、自分が身につける墨染の僧衣で包み守りたいと思います。

背景:
出家した慈円が、自らの宗教的使命と人々への慈愛を詠んだ歌です。墨染の袖は僧侶の衣を象徴しています。

翻訳では伝わらない良さ:
「おほけなく」という謙遜の表現が、慈円の心情を丁寧に伝えています。日本語独自の敬語表現や宗教的な背景が、この和歌の深みを増しています。

まとめ

まとめ

百人一首の和歌は、限られた文字数で自然や心情を巧みに描き、時代を超えて私たちの心に響きます。特に、比喩や言葉の響きが生み出す繊細な美しさは翻訳では捉えきれない部分です。それが、日本語で読むからこそ味わえる和歌の真髄と言えるでしょう。

最後に

最後に

百人一首ももう少しとなりました。今まで様々な和歌がありましたが、好きなものはみつかったでしょうか?寂しげなものや悲しげなものが多いようにも思いますが、それらも日本の文化的な部分もあるのかもしれません。ただ、恋心などもそうですが、自然の美しさなど、様々な機微に気づき、それを表現する和歌は国などは関係なく、楽しんでもらえるのではないかと信じています。

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